歯が一本もなくてもインプラントは可能?
「歯が一本もなくても、インプラントはできますか?」というご相談をいただくことがあります。
結論から申し上げますとインプラント治療は可能です。
インプラント治療は部分入れ歯やブリッジなどと異なり、顎骨に人工の歯を固定できる人工歯根(インプラント体)を埋め込み、失った歯の代わりとする医療手段です。部分入れ歯やブリッジは健康な歯を利用して人工の歯を入れていくため、歯が全くない状態では治療ができないのに対し、インプラントは顎骨に直接埋め込むため、歯が一本も残っていなくても治療が可能です。
4本以上のインプラント体を埋め込み、それを支えにして歯を固定していくことができます。顎骨にしっかり固定されるため、総入れ歯のように定期的に取り外して洗う必要もなく、しっかり噛めることがインプラントの大きなメリットです。またオーバーデンチャーという技術があります。入れ歯タイプの上部構造で取り外しが可能です。通常の入れ歯とは異なり安定感があり、しっかり物が噛める利点があり、少ない本数のインプラントでの維持も可能で、費用が抑えられるのもメリットの1つです。入れ歯とインプラントの特性を併せ持つ治療技術といえるでしょう。
インプラント治療で重要なのは残っている歯の本数ではなく、インプラントを埋め込むための顎骨の量が十分に存在するかどうかです。長年総入れ歯を使用していた場合、顎の骨が痩せている可能性が高いため、治療開始前に骨の状態をしっかりと確認する必要があります。もし顎骨の量が足りない場合は、インプラント治療以前に骨増大術を用いて骨の量を確保する必要があります。
また、骨粗しょう症を患っている場合には、投薬している薬の種類によっては治療が出来ない場合があります。それは、骨粗しょう症の治療薬、ビスフォスフォネート系の薬を服用している状態で外科手術を行うと、骨が壊死する可能性が出てくるためです。その他にも、リウマチやガン治療などに用いられる薬剤でも顎骨壊死が起きるリスクはあります。自分の使っていた薬の種類、服用している(いた)時期、期間を主治医にしっかり確認し、問題のないことが確認できればインプラント治療を進められます。
顎骨の量や病状に問題がなければ治療可能なインプラントですが、心疾患を患っている方や持病のお持ちの方は治療を受けるのが難しいケースがあります。インプラント治療は外科手術であり出血を伴うため、心疾患や持病をお持ちの場合、身体的な負担が大きくなるためです。特に心筋梗塞、狭心症、ペースメーカーを入れている方などの治療は困難になります。出血した部分から細菌が入り心内膜炎になる可能性や発作が起きる可能性があるため、これらの心疾患を患っている方は、心臓の治療が進むまではインプラント治療を控えるようにしましょう。